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Academicトピックス(New)

最近受理したAcademicトピックスを掲載します。メンバー限定ページのAcademicトピックスのページには研究分野ごとに多数の記事が掲載されています。

In this page, new articles of Academic Topics are displayed. Many other articles are displayed in the Academic Topics pages in the member-limitted page. Faculty members, students, graduates, and ex-faculty members introduce various academic research topics that have been or are currently being conducted in the schools and departments of SOKENDAI.





 
2017/03/14

オートファジーと顕微鏡、その最前線


鈴木 邦律 
(Kuninori Suzuki)

東京大学大学院新領域創成科学研究科附属バイオイメージングセンター准教授
分子生物機構論専攻修了(2002.03))

                                           修正版受理:2017.03.08

 

大隅先生のノーベル賞は、Discoveries of mechanisms for autophagy(オートファジーの機構の発見)が受賞理由となっています。受賞理由となっている最初の論文では、出芽酵母のオートファジーのプロセスを光学顕微鏡観察する手法が報告されました1。この発見を基盤に、光学顕微鏡を用いてオートファジー変異体のスクリーニングが行われ、15種類のオートファジー変異体が同定されました2

私が総研大に入学し、大隅研究室に所属したのは19994月で、オートファジーに必須なATG (autophagy-related)遺伝子の同定がほぼ終わった時期でした。私は博士課程において、蛍光タンパク質GFPを融合させたAtgタンパク質を網羅的に観察し、Atgタンパク質が一旦液胞近傍にドット状構造体として集積してからオートファゴソームを形成することを示しました3。電子顕微鏡観察によれば、オートファゴソーム形成は隔離膜と呼ばれるカップ状の中間構造体を経由することが知られていましたが、当時の技術では蛍光顕微鏡下に隔離膜を同定することができませんでした。試行錯誤の末、我々は隔離膜をカップ状の構造体として蛍光顕微鏡下に可視化する手法を開発しました4。この研究により、Atgタンパク質はまずドット状構造として集積し、隔離膜を経由してオートファゴソームを形成することが明らかとなりました(図1)。



               図1.オートファジーの過程

         細胞が栄養飢餓を感知し、オートファジーが誘導されると、液胞近傍に
          Atgタンパク質が集結し、隔離膜形成の起点となるドット状構造体を形成する。
          隔離膜は被分解物を取り囲むように湾曲しつつ伸展する。やがてカップの末端
          が閉じることにより,二重膜オルガネラであるオートファゴソーム
が完成する。


 オートファジー変異体の単離が報告されて以来24年になります。私たちは蛍光顕微鏡観察を中心とし、オートファジー関連構造体を次々と可視化することでオートファゴソーム形成機構の解析を進めてきました。最近になってようやく全てのオートファジー関連構造体を可視化できるようになったので、これからオートファゴソーム形成機構の核心に迫れる研究が進められると期待に胸を膨らませています。

1.         Takeshige K, Baba M, Tsuboi S, Noda T, Ohsumi Y. Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutants and conditions for its induction. J Cell Biol. 1992;119(2):301-11.

2.         Tsukada M, Ohsumi Y. Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae. FEBS Lett. 1993;333(1-2):169-74.

3.         Suzuki K, Kirisako T, Kamada Y, Mizushima N, Noda T, Ohsumi Y. The pre-autophagosomal structure organized by concerted functions of APG genes is essential for autophagosome formation. EMBO J. 2001;20(21):5971-81.

4.         Suzuki K, Akioka M, Kondo-Kakuta C, Yamamoto H, Ohsumi Y. Fine mapping of autophagy-related proteins during autophagosome formation in Saccharomyces cerevisiae. J Cell Sci. 2013;126(Pt 11):2534-44.



 

 

 
2017/03/14

鶴のダンス、意外な関係が明らかに

                   :双方向コミュニケーションとしての特徴と機能

武田 浩平

総合研究大学院大学 特別研究員

生命共生体進化学専攻修了(2016.03), 21回長倉賞)

                                           修正版受理:2017.03.07

 

 コミュニケーションは動物の生存・繁殖に必須である。一方向の信号伝達(例:雄から雌への求愛)は、送り手と受け手の行動を別々に解析することが可能であり、定量的な研究が行われてきた。一方で、二個体が同時に信号をやり取りする双方向コミュニケーションは、同一個体が送り手と受け手の両方を同時に担うため、二個体を別々に解析できない。この複雑さのため、過去の研究は記述的なレベルに留まり、定量的な分析がほとんどなされていなかった。そこで、私は、双方向コミュニケーションの1つである、タンチョウ(Grus japonensis)のつがいが行うダンス(つがいダンス、図1)の特徴と機能を調べ、その詳細を明らかにした。


 
                           図1. タンチョウのつがいダンス


 行動要素がどのような順番で現れ、雌雄間で行動がどのように同調するかを調べたところ、3つの行動要素が、つがいダンスに共通した中心構造であり、これらの行動要素が互いに同調しつつ、順番に行われることが分かった(図2)。このような規則的な特徴を持つということは、行動要素の順番と要素が、コミュニケーションの要となっている可能性を示唆している。



                 図2. つがいダンスの中心構造。矢印が順序、点線が時間的同調を示す。



 ダンスの踊り方には、つがいや時期ごとに違いがある。これらの違いは何を意味するのだろうか。踊り方と繁殖成功との関係を調べたところ、繁殖に成功してきたつがいほど、ダンスの息が合う度合いが低いことが分かった。この結果は当初、予測されたパターンと逆であり、ダンスと繁殖の関係が単純ではないことを示している。もしかすると、つがいになって間もない雌雄など、これまでに繁殖できていないつがいほど、ダンスの息を合わせることで絆を強めようとしているのかもしれない。そうであれば、双方向コミュニケーションが繁殖に成功するための機能を持つといえるだろう。

 本研究は、つがいダンスを詳細に解析した初めての研究である。今後、さらに詳しくダンスを調べることで、動物の複雑なコミュニケーションを理解する手がかりになるだろう。



 
2017/03/14

『徒然草』の「漢」と「和」



黄 昱

国文学研究資料館 博士研究員
日本文学研究専攻修了(2016.03), 21回長倉賞) 
                                                                                                受理:
2017.03.06

 

『徒然草』は14世紀前半の作品で、『方丈記』とともに日本随筆の双璧として知られている。人口に膾炙する序文、「つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて」から始まる本書の美しい文章表現は、その背後に漢籍や日本の古典作品、つまり「漢」と「和」から多大な影響を受けて成り立ったものである。私の研究はこのことに注目し、『徒然草』と漢籍の受容・継承関係について進めてきた。

『徒然草』と漢籍との関係についての研究は、主に『徒然草』に直接引用された漢籍の整理と分析を中心に行われてきた。私の研究は『徒然草』が漢籍受容の際に、中間的な媒体資料を通した間接的・重層的な受容方法が見られることを重要視した。つまり、『徒然草』の表現形成は、漢籍から直接に受容する部分もあれば、漢籍が日本に伝来して日本化したものを受容する部分もあるという、複雑な受容形態が確認できる。原典と日本の古典における中間的資料の二重写しによって漢籍を受容し、自らの文章表現の深みを増したところに『徒然草』の文学的オリジナリティと完成度が見られる。

こうした漢籍受容を通して権威付けられた『徒然草』の古典としての成り立ちを背景に、江戸時代に『徒然草』が日本人の手によって漢文に訳されたことに注目した。唐代李瀚の『蒙求』の体裁に倣い、日本人が書いた異種『蒙求』作品群に、『徒然草』が少なからず漢訳され用いられた現象を分析した。

本研究は『徒然草』と漢籍の関係を取り上げ、受容と影響という二つの視点から『徒然草』の表現形成と継承を考えた。このような「和」と「漢」の往還を通して文学のオリジナリティを獲得し、古典化・権威化される視点から『徒然草』を考えると、『徒然草』を介した知識と表現の流動の様相の一端を明らかにすることができる。一作品の作品研究としてのみならず、歴史社会の中で絶えず評価され、再定義、再構築されつつ読み継がれてゆく作品の社会性を考える新しい切り口になるのではないかと考える。




 

 
2017/03/14

弦理論完成のヒントを探る



本多正純
Masazumi Honda
 Weizmann Institute of Science 博士研究員
(素粒子原子核専攻修了(2013.03), 18回長倉賞)
                              受理:2016.09.13, 修正稿 2016.09.18

 

  はるか昔、宇宙はとても小さく超高エネルギーの状態であったと考えられている。このような状況では、ミクロな世界で現れる量子力学的効果と高エネルギーで現れる一般相対性理論的効果の両方が重要になる。つまり、宇宙初期を記述するには量子効果と相対論的効果をうまく取り入れた量子重力理論が必要になる。アインシュタインは量子力学を「神はサイコロを振らない」と批判したが、彼が構築した一般相対論にサイコロを取り入れなければならない。このような量子重力理論の候補はいくつも提案されているが、一体どの理論が正しいのか、そもそも今まで提案された中に正しいものがあるのか、未だによく分かっていない。

 量子重力理論の有力候補の1つとして、弦理論が知られている。弦理論は基本要素を弦とする理論であり、弦の振動が様々な粒子を記述する。しかし弦理論の標準的な定式化は完全ではなく、弦の相互作用が強くなると正しくないと考えられており、弦理論の完全な定式化が求められている。

 私の主な研究課題の1つは、ゲージ/重力対応(またはAdS/CFT対応)という仮説を用いて、弦理論定式化のための手がかりを得ることである。これは特殊な状況下の弦理論と、ゲージ理論と呼ばれる粒子の理論の間の対応であり、正しいとすればゲージ理論の解析から相互作用が強いときの弦理論の情報を読み取ることができる。

そこで私は、Aharony-Bergman-Jafferis-MaldacenaABJM)理論と呼ばれるゲージ理論を詳しく解析することで、対応する弦理論に関する情報を探ってきた。長倉賞の対象となった研究では、この理論を解析的手法と数値的手法を組み合わせることで詳細に解析した(図1)。このときの研究では数値計算に伴う誤差があったが、その後解析的手法の発展により特定のパラメータ領域においては厳密な計算が可能になり、より正確な解析ができるようになった。また、ABJM理論はM理論と呼ばれる膜を基本要素とする理論や、Vasiliev理論と呼ばれる高いスピンを持つ粒子の理論との対応関係も期待されており、それらの理論との関係も議論した。

 



図1:長倉賞受賞対象となった研究の主な結果[JHEP1205 (2012) 121]
縦軸は
ABJM理論で計算した対応する弦理論の自由エネルギーに関して、我々の数値シミュレーションの結果
から別のグループによる以前の研究における仮説を差し引いたもの。横軸は弦理論に現れる膜状の物体の枚数を
表している。
kは弦の相互作用の強さを決めるパラメータで、値が小さいほど弦の相互作用は強くなっている。こ
の結果により、以前の研究では取り入れられていない効果の存在が明らかになった。



 
2017/03/14

惑星の種はすき間だらけ



片岡章雄
Heidelberg Univ., Institute for Theoretical Astrophysics
(日本学術振興会 海外特別研究員)
(天文科学専攻修了(2015.03)、第20回度長倉賞)  
                                                                                                 受理:2016.01.18
 


  我々はこれまでの研究によって、ミクロンサイズのダストから、10
キロメートルの微惑星までのひと続きの進化理論を構築することに成功しました。
 惑星は、ダストと呼ばれるミクロンサイズ以下の固体微粒子が互いに衝突・付着し大きくなることで形成されると考えられています(図1)。しかし、どのようにして惑星サイズまで成長するのかは謎に包まれていました。特に、10キロメートル程度の微惑星より小さいサイズでは、自己重力が非常に弱いためその付着成長が困難だと考えられていました。我々は、惑星形成の標準理論では考慮されていないダストの内部構造進化を理論的に正確に追うことで、この「ダストから微惑星への成長の謎」を解明することに挑みました。



 その結果、「惑星の種」は一旦すき間だらけになった後、ガスの向かい風や自身の重力によって圧縮され、惑星の元となる微惑星を形成することがわかりました。更に、このような「惑星の種」の進化過程は、従来の惑星形成理論における最大の理論的問題「中心星落下問題」を解決することがわかりました(図2)。


                                  以上のクレジット: 片岡章雅 (総合研究大学院大学/国立天文台)
 
  我々の次の目標は、このような成長途中の惑星の種が、実際にすき間だらけであることを天文観測によって実証することです。その第一歩として、理論的に解き明かしたすき間だらけの惑星の種がもし惑星を形成中の原始惑星系円盤に存在した場合、どのように観測されるかを計算しました。その結果、現在稼働中の電波望遠鏡
ALMAでの観測を用いれば、惑星の種が従来考えられていた中身の詰まったものか、今回提唱したようなすき間だらけのものかを区別できることがわかりました。すなわち、本理論の検証が可能であることがわかったのです。
 我々は2015年度にALMAへの観測提案を行い、最高優先度で採択されました。現在は観測が実行されるのを待っています。現在も引き続き観測的実証を視野に入れつつ、惑星形成理論の完成を目指して研究しています。


 
2017/03/14

睡眠障害「ナルコレプシー」発症のオレキシン神経細胞数

                               ボーダーラインはどこだ?
 

田淵紗和子

Univ. of Colorado Denver, Dept. of Physiology and Biophysics (日本学術振興会 海外特別研究員)

(生理科学専攻修了(2015.03)、第20回長倉賞)       受理:2016.03.06


 

現代社会において、睡眠障害は様々な問題の原因となっている。睡眠障害の一つである「ナルコレプシー」は、日本人の600人に1人が罹っているといわれている。ナルコレプシーの症状には、①日中の耐え難い眠気、②睡眠の分断化、③入眠時幻覚、情動の変化により抗重力筋が脱力して倒れてしまう④情動脱力発作がある。ヒトでは、思春期または成人期初期に発症することが知られている。直接的な発症原因は、覚醒の維持に重要なオレキシン神経の脱落であることが知られていた。しかし、どの程度のオレキシン神経脱落により発症するかは未解明であった。これまでの研究では、出生直後からオレキシン神経が脱落するナルコレプシーモデルマウスが用いられてきたが、思春期に好発するヒトのナルコレプシーのモデルマウスとしては不完全であった。ナルコレプシー症状発症メカニズムの解析には、よりヒトのナルコレプシーに類似したモデルマウスの作製が求められていた。

 そこで、本研究ではオレキシン神経脱落のタイミングを制御可能な新規ナルコレプシーモデルマウスを作製し、オレキシン神経細胞数とナルコレプシーの諸症状発現の相関を検討した。生後12週齢からオレキシン神経脱落を開始させ、脳波と筋電図および動画を解析し、睡眠覚醒パターン変化を観察した。すると、1週間後に覚醒状態を維持できず何度も眠ってしまう睡眠覚醒の分断化が観察された。さらに、2週間後には睡眠覚醒の分断化が悪化し、脱力発作が発現した。オレキシン神経細胞数と症状発現時期との関係を検討すると、86%のオレキシン神経が脱落すると睡眠覚醒の分断化が生じ、95%のオレキシン神経が脱落すると脱力発作が起こり、さらなる脱落により症状が悪化することが明らかとなった(1)。これらのことから、オレキシン神経細胞数が正常状態の15%以下になるとナルコレプシーを発症することが明らかとなった。今回作製したナルコレプシーモデルマウスは、治療薬開発に貢献できると期待される。


 
2017/03/14

卵巣の中に精子?-生殖細胞の性が決まる仕組み-



西村俊哉
名古屋大学理学研究科 助教
(基礎生物学専攻修了(2015.03)、 第20回総研大研究賞) 

                        受理: 2016.03.07

 

 多くの動物は繁殖するためにオスとメスという性を持つ。オスは小さな精子を大量に作る一方で、メスは大きな卵を作る。これら精子と卵は、発生を遡ると生殖細胞という共通の細胞にたどり着く。生殖細胞は身体を構成する体細胞に取り囲まれて存在しており、それらを合わせて生殖腺と呼ぶ。「精子になるか卵になるか」という生殖細胞の性の決定には、体細胞の性が強く影響している。体細胞がオスになると精巣を作り、生殖細胞は体細胞の影響を受けて精子になる。一方、体細胞がメスになると卵巣を作り、生殖細胞は卵になる。しかし、生殖細胞の中のどのような遺伝子の働きにより生殖細胞の性が決まるのかについては脊椎動物では全く分かっていなかった。

 大学院時代、私はこの生殖細胞の性の問題についてメダカを用いて取り組んできた。研究のアプローチとしては、生殖細胞で働く遺伝子を網羅的に調べ、オスとメスにおいて発現の異なる遺伝子を探索することであった。生殖細胞の性に重要な遺伝子を同定するまでに4年の歳月を要したが、foxl3という遺伝子が精子と卵のスイッチに関わることを見出した。foxl3はメスの生殖細胞でのみ働いており、精子形成の開始を抑制する機能を持っている。その抑制スイッチを人為的に解除(foxl3の機能欠損)すると、身体はメス、さらに生殖腺は卵巣になるにも関わらず、生殖細胞は機能的な精子になることが明らかとなった。(図1)。この結果は、精子形成の抑制、つまりオス化の抑制が生殖細胞の性が決まる仕組みにおいて重要であることを示すだけでなく、生殖細胞を取り巻く環境がメスであったとしても、生殖細胞の性が変わるだけで精子が形成されることを示す新たな知見である。


参考文献

Nishimura T, Sato T, Yamamoto Y, Watakabe I, Ohkawa Y, Suyama M, et al: foxl3 is a germ cell-intrinsic factor involved in sperm-egg fate decision in medaka. Science 349:328–331 (2015). 
 

 
2017/03/14

Unexpected Reunion of Gravity

                                   and Non-equilibrium Physics


Shin Nakamura
Professor, Dept.of Physics, Chuo University
 (加速器科学専攻修了(2001.03)、第6回長倉賞(2000.12)、第1回総研大科学者賞(2015.04))
                                                       受理:2015.09.10

 

   Albert Einstein was one of the most talented physicists in history. He invented important theories in physics, including theories of special relativity, photoelectric effect, and Brownian motion. Amazingly, these three theories were made in the same year, 1905, that is called Einstein’s miracle year.

   Special relativity has been improved to general relativity, a theory of gravity, ten years later. Now, general relativity is established as a standard theory of gravity that is necessary not only for cosmology but also for construction of the GPS system that is important to our modern life. The theory of Brownian motion ignited non-equilibrium physics, the physics of systems out of equilibrium. The theory of photoelectric effect brought him a Nobel Prize.

   Once century after the miracle year, physicists found a surprising unexpected “reunion” of the Einstein’s theories. The key idea is the AdS/CFT correspondence that is a correspondence between a theory of particles (gauge theory) and a theory of general relativity. This correspondence says, a system of gauge particles is equivalent to a system of gravity. If we consider a many-body system at thermal equilibrium, a mathematically equivalent description of the system is given by using a black hole physics in the gravity side.

   Currently, I am working on theoretical physics mainly focusing to application of the AdS/CFT correspondence to non-equilibrium physics. Non-equilibrium physics deals with systems of many particles that are out of equilibrium. Although most of the phenomena we find in our daily life are non-equilibrium processes, their theoretical description is still a challenge. By using the AdS/CFT correspondence, we have a chance to describe the non-equilibrium systems in the language of general relativity. Interestingly, it is often the case that the gravitational description is much easier than the original description of non-equilibrium systems. For example, I have theoretically discovered a new type of phase transition of conductors where the nature of conduction, such as conductivity, suddenly jumps under out-of-equilibrium conditions (Fig. 1). I am trying to make a collaboration with experimental physicists to verify the transition in real materials.

 Fig. 1    An example of “jump” of the conductivity. Conductivity is given by the current density (J) divided by the electric field (E). Hence the jump of the electric field indicates the jump of the conductivity of the material. (The figure was taken from [S. Nakamura, Phys. Rev. Lett. 109 (2012) 120602] and was edited.)

 


                  

 
2017/03/14

Toward Practical Use:

    Numerical Algorithms Based on Linear Algebra for Applications                           

Keiichi Morikuni
 Ass.Professor, Dept. of Computer Science,
University of Tsukuba
(情報学専攻修了、第18回長倉賞受賞、2013.03)
                                              受理:2015.09.16

 

In the 5-year Ph.D. program, I studied computational methods called preconditioners for solving large-scale least squares problems. The problems are fundamental in industry, engineering, and social sciences and are, for example, to fit models to observations. For the solutions, I focused on using modern iterative methods whose convergence can be accelerated by using preconditioning. Typical preconditioners are based on incomplete matrix factorizations, although additional memory is required to store the factors whose size is competitive with the size of a given problem (Figure 1). I designed efficient numerical algorithms to precondition the modern iterative methods by using classical iterative methods. The proposed methods were applied to practical problems such as image reconstruction problems in biology and adaptive optics in astronomy. I showed with numerical experiments that the proposed methods outperform state-of-the-art methods (Figure 2). For this study, I was awarded the Nagakura Research Incentive Award.

After the graduation, I further investigated the convergence of those methods and characterize the solution that the methods give. In addition, I generalized the methods and broaden the scopes of the problems. On the other hand, making use of the Ph.D. work on numerical linear algebra, my research field is extending. In these days, I am focusing on eigenvalue computations using a contour integral-based numerical method. Eigenvalues are characteristic quantities of a matrix (array of numbers). The study has applications such as structural analysis and data science. In particular, in order to obtain more accurate or realistic solutions, I am studying techniques to employ prior knowledge of the property of the solution (Figure 3).









               Figure 1. Required memory.



             
 

                                        Figure 2. Convergence history for Maragal_6.
                                          Joint work with Ken Hayami of the National Institute of Informatics.
                                          The test matrix is from the University of Florida Sparse Matrix Collection.







  Figure 3. (left) Original image. (above) Previous method. (below) Proposed method.

Image segmentation. Identifying the hat and face as one object, the person is well
 segmented. Joint work with Shunya Ueta and Tetsuya Sakurai of the University of
 Tsukuba. The original image is from the Berkeley Segmentation Dataset and Benchmark.

 
2017/03/14

Between the Past and the Present:

  Archaeological Heritage in Modern Peru


Daniel Dante SAUCEDO SEGAMI

Visiting Researcher, National Museum of Ethnology-Japan
(比較文化学専攻修了(2014.09)、第20回総研大研究賞受賞(2015.03))
                                                   受理:2015.09.15

 

  As a result of globalization, archaeological heritage has become an important element of tourism. Recent discoveries can be followed on Internet, attracting the attention of people from all over the world to remote areas, driving interest to visit them. The affluence of tourists and the economic boost for acquiring local services have become important reasons for regional and local governments to support tourism. Because of this situation, the idea that archaeological heritage can be protected and used to improve local economies by its revalorization through tourism has become very popular in Peru.  

  However, there are several issues that arise when tourism is chosen as the main purpose for archaeological heritage. Are all archaeological sites prepared to receive tourists and give them the services they need? Are all archaeological sites interesting enough for people to travel to these remote places, maintaining a steady number in order to boost local economies? Do all stakeholders involved (governments, local people, archaeologists, among others) agree on what should be considered heritage and how to use it? What is the definition of heritage that every stakeholder carries?

  My research aims to answer these questions by positioning archaeological remains as the center of different relationships established by stakeholders, identifying the different values given to these remains. To achieve this objective, I use the perspective of Public Archaeology, a field of archaeology that studies how archaeology is immersed in contemporary society. My fieldwork includes identifying and interviewing stakeholders, carrying out participant observation of their relationship between them and archaeological remains.


Figure 1: Archaeological pottery used as decoration at La Zaranda town

(Photo by Daniel Saucedo-Segami, 20/10/2011)

         Figure 2: Shamanist ritual of baño de florecimiento at Huaca Loro during excavations of SAP

(Photo by Daniel Saucedo-Segami, 05/08/2008)


Figure 3: Local representations of Sicán artifacts at Ferreñafe city

(Photo by Daniel Saucedo-Segami, 27/07/2008)



 

 


 
2017/03/14

口承史の比較分析を通した歴史人類学の新たな地平に向けて


大場 千景
国立民族学博物館 外来研究員、大阪府立大学 日本学術振興会特別研究員
(地域文化学専攻修了、第17回長倉賞受賞、2012.03)
                                               受理:2015.08.30   改訂稿受理: 2015.10.05

 

私は、2005年からエチオピア南部で暮すボラナと呼ばれる牧畜民に関する人類学的研究を行ってきた。2007年度に総研大の博士過程に入学してからは、テーマをボラナの人々の口頭伝承や歴史記憶に絞って、フィールドワークを行った。

2011年度に長倉賞を頂いたが、その受賞の対象となったのが、無文字社会における歴史の生成と継承の技法に関してまとめた博士論文である。ボラナは、年齢階梯を根幹とした独自の社会組織をもつ。彼らは、8年に一度リーダーを交代するが、その歴代のリーダーの名前とともに、各リーダーの代において起こった出来事を記憶し、伝承してきた。その歴史は15世紀にまでさかのぼることができる。論考では、無文字社会に生きる彼らが、文字に頼ることなしに、いかにして集団で歴史を記憶し、維持してきたのか、その歴史の生成と記憶のメカニズムの解明を行った。

この博士論文は、2014年に『無文字社会における歴史の生成と記憶の技法』というタイトルで清水弘文堂書房より出版された。また、今年度、博士論文及び、論文の主要なデータであった口承史の現地語テクストと注釈をまとめて英訳したものをLit Verlag社より出版する予定である。今後、欧米はもとより、エチオピア及びケニアに向けて出版されていくことになる。

研究の新たな展開としては、2012年よりそれまでおこなってきたエチオピア南部地域での調査のみならず、エチオピア南東部や北部地域においても口頭伝承の収集を行いながら、無文字社会における口承史の比較研究をおこなっている。歴史のあり方や歴史への認識は、それぞれの社会でどのように変化し、また変化しないのか?また歴史記憶や認識の差異や類似性はいかにして生まれるのだろうか?こうした問いを解明することを通して、歴史認識の形成に関する理論を確立していきたいと考えている。



                  
                   図1
. 無文字社会における歴史の生成と継承のモデル

                 歴史を生成し継承するための三つの技法があり、これらが相互に連関しながら
                   歴史は生成されてきた。







  
         

                    図2. ①
解釈様式

                    出来事の生起の要因を説明するための定型化した解釈の様式が存在し、人々が
                    解釈様式を共有することで、歴史が生成され、共有される。







  
   
       
 


              


              

                     図3. ②記憶装置

                   叙事詩を記憶し、解説しながら歴史を語ることで、文字に
                     頼ることなく歴史を共有し、保持することが可能となる。













                           

                    図4. ③歴史法則

                    ボラナは、7つの運命が循環しながらプログラムのように
                    出来事が生起すると考えている。

                    リーダーが代わる8年ごとに7つの運命が以下の順番で回帰
                    的に起るとする歴史法則に導かれながら、出来事を解釈し、
                    記憶している。

                            <7つの運命>

                                                       フラーサ:内紛および紛争の運命

                             ② マルディーダ:特になし

                             ③ ダラーラ:特になし

                             ④ リバーサ:大きな紛争や内紛の運命

                             ⑤ サッバーカ:天災や紛争の運命

                             ⑥ モッギサ:紛争の運命

                             ⑦ マーホラ:平和の運命



 
2017/03/14

「からまった」分子が氷を融かす


望月 建爾
岡山大学自然科学研究科 特任助教

(機能分子科学専攻修了、長倉賞受賞、2014.03)
                                                          受理:2015.03.23
 

   氷は通常、融点(1気圧では0℃)で容器の壁や表面から融け始めます(不均一融解)。これに対し、界面が存在しない理想的な環境では、氷自身が自発的に結晶構造を乱し、融解のきっかけを作りだす、均一融解という現象が起こります。身近な例では、氷に強い光をあてると、表面だけでなく内部からも融け、融けた液体の水がチンダル像と呼ばれる、雪の結晶とよく似た形を氷の中に形成します(図1)。この氷の均一融解は、いわゆる一次相転移という物理・化学の最も重要な現象の一つです。氷の結晶は、それぞれの水分子が隣接する4つの水分子と計4本の水素結合を作っており、規則正しく秩序を保った非常に安定な水素結合ネットワーク構造を形成しています。一方、液体の水は、水素結合は残っていますが、より乱雑な無秩序な構造をしています(図2)。均一融解において、氷の安定な構造を崩壊させ、乱雑な液体の水の構造へ変化させる仕組み、特に秩序が崩壊し始める“きっかけ”は、これまで謎のままでした。
 本研究では、分子動力学法を用いて氷の融解過程を再現し、氷の構造の乱れの大きさを測る新しい尺度を開発する事で、氷の構造が乱れる最初のきっかけから、それが成長して最終的に大規模な構造の崩壊に至る過程を詳細に追跡しました。その結果、氷の融解過程が、これまで考えられていた、微小な液滴の形成→液滴の成長→大規模な融解という単純な経路ではなく、ある種の格子欠陥対の形成と分離(図3)といった紆余曲折を経た複雑な過程を経ないと、融解できない事を明らかにしました。水分子同士の水素結合のエネルギーは非常に強いため、温度による構造の揺らぎに誘発されていくつかの欠陥が出来ても、ほとんどの場合すぐに安定な氷構造へ戻ってしまいます。しかし、一旦格子欠陥対が分離すると、それらの欠陥対を消して、再び完全な氷構造へ戻すのは困難であり、糸がからまりなかなか元に戻せないような現象、“水素結合ネットワークのからまり”が生じます。この欠陥対は“消えない欠陥”として結晶中に存在し続け、さらに、水素結合ネットワークの組み替えを活性化する役割も果たす事で、氷の強固な水素結合ネットワーク構造を崩壊に導く“きっかけ”になる事を見つけました。

図1:氷の内部融解で現れるチンダル像の写真。単結晶の氷の内部から融解した時に現れる模様。写真の中の六花模様は融解で生じた液体の水で、その周りは氷の結晶。チンダル像の大きさは5 mm程度。(提供:中谷宇吉郎雪の科学館)
                                                                                                                                                                          












図2:氷(左)と水(右)の分子構造。赤色が酸素原子、白色が水素原子を表す。白色の線は分子内の酸素と水素の結合、水色の線は分子間の水素結合を表す。氷は、各分子が周囲の4分子と4本の水素結合を作っている。6つの水分子が環を作り、非常に秩序だった構造である。一方、液体は氷とは異なり、乱雑な構造である。


図3:分離した欠陥対の典型的な構造。左右の青と赤で囲まれた図は、中央の図の欠陥対の周辺構造を拡大した。左の欠陥は、侵入型欠陥と呼ばれ、結晶中に一つ余分な分子が入っている。右の欠陥は、空孔型欠陥と呼ばれ、結晶点にあるはずの分子が抜けている。二つの欠陥は対として生成し、フレンケル欠陥と呼ばれている。欠陥対以外の部分は、整然とした氷構造を保っているのが分かる(中央の図)。この欠陥を消すには、結合を一旦壊しながら、中央の図の橙色の矢印の経路を辿り、侵入型と空孔型の2つの欠陥が出会う必要がある。このように、特定の経路を通らないと、完全な結晶構造に戻れない状態を“糸のからまり”と表現した。

参考文献:
K. Mochizuki*, M. Matsumoto, I. Ohmine, Defect pair separation as the controlling step in homogeneous ice melting, Nature, 498, 350-354 (2013)

http://kenjimochizuki.wiki.fc2.com/




 
2017/03/14

成熟した神経細胞においても新たな抑制性シナプスはできるのか?

    :::: グリシン受容体のシナプス集積ダイナミクスの解析

中畑 義久
自然科学研究機構 生理学研究所 生体恒常機能発達機構研究部門
(生理学専攻修了、総研大研究賞受賞、2014.03)
                                                            受理:2015.03.20

 

   運動や感覚から記憶や情動といった高次機能に至るまで、脳神経の機能は、多数の神経細胞が信号を伝達する回路によって成り立っている。こうした神経細胞間の信号伝達は、シナプスと呼ばれる「つなぎめ」で行われることから、機能的な脳神経活動には適切なシナプス形成が不可欠である(図1)。加えて、個体が日々変化する環境に適応するためには、シナプス編成が生涯に渡って行われる必要がある。シナプス編成の研究は、従来、神経細胞の興奮(神経活動)に伴うCa2+の細胞内流入が重要であると考えられてきた。しかし、脊髄などで神経活動のパターンを調整するグリシン作動性シナプスの機能は、発達に伴って興奮から抑制に逆転するという特徴がある。そのため、抑制の働きとなった成熟期において、新たなシナプスが形成されるのか、という基本的な問題は未解明であった。
   そこで、本研究では主に成熟期のマウス培養神経細胞を対象とし、グリシン作動性シナプスを構成する受容体の局在と機能変化を検討した。薬理学的手法にて成熟後に初めてグリシン受容体が活性化する、というモデルを作製し、光褪色後蛍光回復法や一粒子追跡法などを用いた生細胞イメージングから電気生理学的手法による機能解析まで多角的に検討した。すると、成熟期の神経細胞においても、受容体の活性化に伴って機能的なグリシン作動性シナプスの形成が確認された。また、それは細胞膜上のグリシン受容体がシナプスにおいて活性化され、その結果受容体の側方拡散(移動性)が減少し、シナプスでの局在が増加することが示唆された(図2)。
   これらの結果から、成熟期の神経細胞では、従来のモデルとは異なる機構によって抑制性シナプスが形成されることが明らかになった。現在は、この細胞内シグナル経路や関連分子との相互作用について検討しており、成熟した個体における神経回路編成機構の一端を明らかにしたいと考えている。